第9章 そして明日の世界へとー
・・・あれから3日が経った。
レスティアに戻った後、ルシーダちゃんは重要参考人
として身柄を拘束され、会うこともかなわないでいた。
お父様が裁判官にかけあってくれていたが、
どうなったかもわからず。
あたしはというと、割り当てられた部屋で一日を過ごしていた。
「大丈夫だ、悪いようには絶対にさせない」
そう言ってくれたお父様を信じ、祈るだけ。
今日も彼女のために、祈る。
・・・と、ドアをノックする音が耳に入った。
「シルフィールさん、ローザでございます。」
ローザさん?
「あ、はい、今あけます」
あたしはベッドから飛び起き、ドアに駆け寄って鍵をあけた。
ローザさんは万面の笑みを浮かべてわたしに真っ白な封筒を
差し出した。
「良い知らせ、だと思いますよ。」
封筒をひっくり返すと蝋蜜で麗騎士の銘で封がなされていた。
あたしは部屋の窓際にあるライティングデスクに駆け寄り、
はやる気持ちを抑えて中身を確認する。
ペーパーナイフで口をあけ、もどかしく中に入っている
手紙を取り出し、読む。
「午後5時、中庭で。彼女が会いたいと言っている。」
尖った癖のある文字でそれだけ書かれていた。
間違いない、お父様の字だ。
時間を確認する。あと10分しかない。
「ローザさん、あたし、行って来る!」
「はい、行ってらっしゃいませ、シルフィールさん」
そう受け答え軽くお辞儀をするローザさんをあとに、
あたしは中庭に向かって駆け出していた。
夕暮れの宮殿の中庭。
噴水の前に腰掛け、しばし、待つ。
・・・やがて二人が歩いてきた。
立ち上がり、二人を迎える。
「またせたな、フィール。」
「いえ、お父様」
「判決はこれからだが、安心していい。
彼女は親の為、ただそれだけのために働いていただけだから。
エヴァンでヴァーミリオンを守ってくれたことも
プラス要素になってる。
おそらくは1年間の保護観察ということになるだろう。
本局に移送する間に少しだけ時間がとれたから呼び出した。
さぁ、ルシーダ。」
「・・・あの、、、その・・・ありがとう。あのとき、
定期便の中での言葉にまだ返事していなかったから・・・。
でも、わたし、どうしたらお友達になれるのかわからなくて・・・」
「簡単だよ、友達になるのってすっごく簡単。
手を出して、つなぐの。
そしてあたしの名前を呼んでくれればそれでいいの」
「・・・えっと・・・」
彼女はおずおずと手を差し出し、あたしと手をつなぐ。
「・・・ごめん、名前・・・」
くすくすっと笑い、あたしから言うことにした。
「あたしはシルフィール。シルフィール・ファルク・
シュナイザー。シルフィールでもフィールでもシルフィでもいい。
呼びやすい名前で呼んで。」
「・・・フィール」
たどたどしくもあたしの名前を呼んでくれた。
「うん!」
「フィール」
何度も繰り返してくれる。
「うんうん!ルシーダちゃん!・・・あたしね、ひとつ
わかったことがあるの。
友達が泣いてると同じように自分自身も悲しくなるんだ。」
「・・・・フィール、あなたが困ったときはいつでも言って。
わたしが今度はフィールを必ず助けるから。」
「ルシーダちゃん!」
どちらからというわけでもなく、あたしたちは夕焼けの
空の下で二人で涙を流しながら抱き合った。
「・・・フィール、ありがとう。
いまは離れちゃうけど、いつかまたきっと会えるから。
そしたらまた手をつないでも、いい?」
「うんうん!」
「・・・さて、そろそろ時間だ。すまないな、フィール、ルシーダ。」
「ルシーダちゃん!」
それを制してお父様に話しかけるルシーダちゃん。
「・・・レディスさん、わたしの我が儘を聞いてくれてありがとう。
・・・またね、フィール。」
なにか、なにかを・・・ルシーダちゃんに・・・。
あたしはふと思いつき、髪を束ねてたバレッタを外して
ルシーダちゃんに手渡した。
「思い出にできるもの、こんなものしかないんだけど」
するとルシーダちゃんはネックレスを外し、
あたしに手渡してくれた。
「・・・交換、だね」
「うん、交換。」
「ありがとう、フィール、そして、さようなら」
「さようならは始まり、だよ。ルシーダちゃん。きっと、また。」
「うん、きっとまた」
「・・・うん。」
ふたりで涙を流した。
でも悲壮感はない。
いつかきっと、今度は笑って会える。
つないでいた手を離し、手を振る。
ルシーダちゃんも手を振り返してくれている。
そして二人は夕闇の中、本局に向かって歩いていった。
第10章へ
少しでも気に入ってくれたらボタンを押して頂けると嬉しいです。
戻る