第8章 アーマーナイトとイリーガル
衝撃が走り、それで目が覚めた。
自分の身体をみる。
手当されてる。
部隊の退却を支援したその直後、「お父様からの」ライフルの
直撃を受けたはずなのに。
「お父様・・・」
不要と言われた言葉が胸に突き刺さる。
ぽろぽろとこぼれ落ちる涙。
でも、誰かがずっとそばにいてくれた気がする。
そう、ずっとまっすぐな瞳でわたしを見てたあの女の子・・・。
あの子はどこ?
どうしたらいいのかわからないけどあの子にあわなきゃならない
気がする。
それにあの子はお友達になれるかなって、そう言っていた
気がする。
・・・ここはどこ?
とりあえずベッドから起きあがる。
全身包帯がまかれてるみたいだけどとりあえず動き回るのに
不自由はない。
どこかの病室みたいだけど、いまは誰もいないようだ。
ドアの前に立つが、ロックされてるようで開かない。
それに時折聞こえる爆音も気になる。
私はドア横にあった端末に触れた。
「トレース、スタート」
ひとことだけつぶやき、目を軽くつむる。
とりあえず状況の把握が先だ。
いくつものブロックとガードプログラムをだまらせて
ネット空間にダイブする。
全体セキュリティを確認。
どうやら保護されたレスティアの基地ではなく戦艦の
内部の一室のようだ。
しかも何者かと交戦している?
バトルブリッジの情報をトレースしてみる。
火器管制はすべてオンライン。
10基のガンランチャーが高速で動き回る物体、
奪取したリオンとレヴァードをロックしようと
やっきになってるのがわかる。
それに時折射程距離内ぎりぎりから支援射撃が、
そのレールキャノンによる砲弾が飛来している。
この艦には情報が無いようだけどその支援射撃が
何者なのかはわかる。
ヴィル・ド・リヴァ。私たちの母艦で旗艦だ。
エリアサーチをかける。
この艦はヴァーミリオンというらしい。そしてやはり旗艦。
それを追随する護衛艦が1隻。
対する陣営は強襲揚陸艦アルトリアとヴィル・ド・リヴァの
2対2、でもアルトリアは強襲揚陸艦だから戦力外と見て良い。
なのにこの混乱っぷりは・・・・
やはり5機、いや4機のAKの活躍のせいか。
お父様のレヴァードは夜襲したときに現れた白銀のAKと
やりあっている。
白銀のAKはこの艦の搭載機でないのか、データがすべて
アンノウンだ。
あと3機のリオンは?
・・・いた。奪い損ねた1機のリオンが交戦してる。
パイロット情報をひきだす。
シルフィール・ファルク・シュナイザー。
ワンテンポ遅れて彼女の写真が現れる。
・・・・あの子だ。
さらに戦闘データを引き出す。
数が足りないリオン1機は彼女がビームカノンで
撃ち落としたらしい。
それでも苦戦を強いられているのがわかる。
同じ性能の機体同士の戦い、しかも相手は3機。
レーザー通信のデータも引き出す。
彼女への通信だけに情報をシャットアウト。
と、手負いだった1機の集光セイルを破壊し、
1機を戦線離脱させた。
リオンの動きが手に取るようにわかる。
「シルフィール、避けろ!」
彼女は1機の攻撃をかわし、そして2機目の
スタンベイルでの電撃をくらったのがわかった。
降下してくる彼女。
電撃による影響で操縦系統にエラーが生じているのがわかる。
すぐには戦線に復帰できないだろう。
だからこそスタンベイルを使ったのだろうが。
2機のリオンの動きを追う。
1機はこちらに、1機は護衛艦に向かっている。
こっちはともかく、護衛艦のほうはまずいだろう。
あの程度の弾幕ならリオンはあっさりとかわして
攻撃をしかけられるはずだ。
それに甲板に降着した彼女の安否も気になる。
一瞬ガンランチャーの火器管制を奪って迎撃しようか
とも思ったが、格納庫に1機、機動ユニットが
係留されているのに気づいた。
エヴァン・・・。
気がついたときは部屋の電子キーロックを解除し、
トレースロードした艦内マップを思い描きながら
格納庫に向かって走っていた。
艦内は時折聞こえる爆音と振動をのぞけば驚くほど静かだった。
格納庫へのドアを開く。
格納庫はすでにわかっていたことだが、ハッチが解放され、
デッキの先端に彼女の機体が立て膝をついた状態で
レールガンで必死に抵抗しているのが見えた。
「・・・。」
交戦中であるせいか、格納庫にはほとんど人がいなかった。
よし、いける。
わたしはタラップを駆け上がり、エヴァンのコクピットに
乗り込んだ。
整備兵がひとり気づき、声を掛けるがもう遅い。
コクピットのハッチを閉める。
整備兵がインターフォンを手に取りブリッジと連絡を取る。
「女の子がイリーガルに乗り込んじゃいましたよ!」
「女の子?眠ってたあの子か?」
「いけるよね、エヴァン。・・・往こう、あの子を助けに!」
コォォォーっとジェネレータがうなりを上げる。
バトルブリッジに回線をつなぐ。
「おい、貴様!」開口一番怒鳴りつけてきたのは艦長か?
「・・・リオンで戦ってるあの子を助ける。
ハンガーロックの解除をして。状況は把握してる。」
「・・・してくれないなら自分でやるけど。」
そこに回線がわって入ってきた。
黒い長髪、美形と言っていい男性。
「リオンに乗っているのは姪だ。助けてやってくれ」
「・・・・善処する。」
piーという電子音のあと、ハンガーロックが解除されて
エヴァンが降着した。
さっきの長髪の男性が話しかけてくる。
「君の名前とその機体の名称は?」
「・・・ルシーダ。この子はエヴァン。」
「管制はどうする?」
「・・・必要な情報は全部自分でまかなえる。
サポートはいらない」
通信を切るとわたしは集光セイルを展開させ、
いまにもデッキから落ちそうなあの子のリオンの前に
機体を回り込ませ、ベイルで弾幕を弾いた。
!?
「その機体、ルシーダちゃん?」
「・・・・助け、に来た。」
「ルシーダちゃん!」
歓喜の声をあげるあたし。
「・・・・敵はほぼ同性能。けど、二人でなら」
「うん!うん!」
「・・・・ヴァーミリオンの管制経由であなたの
リオンの状態は把握してる。
・・・もう動けるよね。まずは目の前のリオンを」
ヒューベリオン管制経由で状態把握!?
やっぱり本物のサイバネティクスチャイルドは
このアリスとは格が違う。
もっともエフィメラも同じコトをしてのけるだろうけど。
「・・・あたしがあいつの動きを止める。あなたは
レールキャノンで仕留めて。タイミングは教える。」
「わ、わかった!」
言うが早いか、エヴァンはセイルから爆発的なフレアを放出して
雷光が如くリオンに迫る!
「・・・あなたでは、勝てない」
あたしはレールキャノンを再びベイルから引き出し、
片膝をついて射撃姿勢を安定させる。
あっという間に背後をとったエヴァンはパイルバンカーを
かまえる。
「・・・エヴァン、パイルバンカー、カートリッジロード」
ガシャッとパイルバンカーにロードされたカートリッジが
廃莢される。
そして、放つっ!
だが振り向きざまにベイルで一撃必殺のパイルバンカーを
受け止めるリオン。
「・・・今。」
「当たれぇ!!!」
ドゥン
反動で機体が揺れる。
ルシーダちゃんの攻撃を防いでいたことが致命的だった。
放ったレールキャノンの砲弾は敵のリオンの下半身を直撃し、
下半身を吹き飛ばした。
さらに2射。
今度は少しぶれて左半身に上腕部に命中、上腕部を吹き飛ばした。
「・・・上出来。次。護衛艦が危険な状態。」
「えっ?」
間髪を入れずにジュリアスさんからの指示が飛ぶ
「護衛艦のサーベリオンがリオンの執拗な攻撃を受けている!
すまんが支援に向かってくれ!」
「あ、はいっ!」
ルシーダちゃんのエヴァンとあたしがサーベリオンの
支援に向かう。
だが、リオンはレールキャノンをブリッジに向けて
構えたところだった。
「間に合わない!?」
「・・・遅かった!」
だが、あらぬところから飛来した一条のビームによって
レールキャノンの砲身が吹き飛ばされる。
やむを得ずレールガンに武器を持ち替え、
こちらに対峙するリオン。
「・・・またあの銀色」
「お父様!」
「・・・父親?」
「ええ、レディス・ファルク・シュナイザー、麗騎士!
聞いたことない?」
「・・・・・・・名前くらいは。そう、娘なのね」
「実の娘じゃないけどね。」
「・・・ごめん、なさい。」
「どうして謝るの?」
「・・・聞いちゃいけないことを聞いた気がする」
やっぱりこの子は悪い子なんかじゃない。
利用されてただけなんだ。
「ありがとう」
「・・・目の前の敵、堕とそう。・・・その、ふたりで。」
ディスプレイごしに恥ずかしそうな表情をするルシーダちゃん。
「うん、ふたりで!」
セイルを再び展開し、リオンに迫る!
「・・・好きに動いてくれてかまわない。」
「・・・・なにがあってもサポートする、から。」
「わかった!」
性能的にアリスを搭載したリオンは単なる機動ユニットである
エヴァンのそれを遥かに凌駕するはずだが、このリオンの動きに
完璧に、ぴったりとついてくる。
しかもあたしと違ってこの広域の戦闘状況をすべて
把握しているようだ。
これもサイバネティクスチャイルドであるルシーダちゃんの
力によるものだろう。
「サーベリオンからリオンを引きはがすわ!」
「・・・わかった。」
3本セイルのうち既に2本を失い、サーベリオンは墜落寸前だ。
艦隊行動に追従できず遅れ始めている。
敵の旗艦の有効射程内でないのが不幸中の幸いだ。
「・・・煙幕を使う。その隙に背後に回り込んで。」
「わかった!」
古典的な手だが、ルシーダちゃんが言うのなら勝算は
あるんだろう。
エヴァンがマルチディスチャージャー、つまりは
多目的ロケット砲を構え、
リオンを囲うようにスモーク弾を撃つ!
敵がエヴァンの仕掛けに必死に状況を把握しようと
しているのがわかる。
あたしはその隙にリオンとサーベリオンの間に入り込み、
レールガンを煙幕の中に撃ち込む。
「・・・挟撃!」
「了解っ!」
けれど、ルシーダちゃんがまたパイルバンカーを構え、
煙幕に突っ込もうとしたその目の前を粒子ビームがかすめ、
出鼻をくじかれる。
「ッレヴァード!?」
その一瞬をついてリオンがサリスと交戦中のレヴァードに向かう。
「・・・逃がした。」
「追わないと!」
「・・・うん。」
リニアクラフトの出力を全開にしてお父様のサリスの
もとに向かう。
「お父様、いまそちらに!」
「すまん、頼む!」
「・・・銀色、いま相手と交渉する。少しさがってて。」
接近するあたしとルシーダちゃんに気づいたのか、
レヴァードがいったん下がり、リオンと合流する。
サリスも少し距離を取る。
「エヴァン?ルシーダか!」
「・・・そう、お父様、わたし。無益な戦いはもうやめて」
「父親に刃向かうか、この出来損ないめ!」
「・・・ッ」
「所詮拾いモノは拾いモノということだな!」
「ひろい・・もの・・?」
「あぁそうだ、捨てられた希少なサイバネティクスチャイルド
だと思って今まで面倒を見てきたが、所詮は恩返しすらできない
出来損ないだったか!」
「おとう・・・さま?」
「えぇい、この期に及んでまだ父親呼ばわりするか、
この孤児が!!」
「・・・・みなしご・・・わたしが・・・・」
「この機体を手にした今、お前は不要だ!消えろっ!」
呆然とするルシーダちゃん。
そこにレヴァードがレイブレードで斬りかかる!
まずい!レイブレードはベイルじゃ防げない!
咄嗟にエヴァンを押しのけ、レイブレードで斬撃を
受け止めるサリス。
「親子ってのはな、血のつながりだけじゃないんだよっ!!
エフィメラ、カートリッジロード!」
「レイブレード、カートリッジロードします」
バスンッ レイブレードから空になったカートリッジが
廃莢される。
再びサリスのレイブレードをマジックサーキットがとりまく。
出力を増したレイブレードは拮抗していたレヴァードの
レイブレードを断ち切り、レヴァードの外装の一部を切り裂いた。
二の太刀でコクピット付近を切り裂く。
だが、致命傷ではない。
さらに斬撃を繰り返そうとしていたサリスを蹴り飛ばし、
距離を取り、ライフルをサリスに向ける。
「麗騎士ごとき若造がなにを語る!」
カートリッジが廃莢され、マジックサーキットが銃身をとりまく。
かわしてる余裕はない、ならば!
放たれるライフルの粒子ビーム。
あたしはいままでそこにいたサリスをおしのけ、ベイルで
粒子ビームを受け止めた。
だが、ベイルごと左腕をもっていかれる。
激しい衝撃がリオンを襲う!
「フィール!無事か!?」
「お父様が無事ならそれで問題ないわ!こっちは左腕を
もっていかれただけだから」
だが、これで使える武器はレールガンだけになってしまった。
「よくも娘をっ!往くぞエフィメラ!ショットガンモード!」
「承知しました、兄様」
くるっと銃の半ばにあるカバーが下がり、リボルバーが回り、
ガシィッという音とともにカバーが戻る。
狙うのは、リオン!
意表をつかれたリオンはライフルの粒子ビームの雨の直撃を受けた。
銃底が下がり、露出したダクトからバシュゥと白煙があがる。
「・・・銀色。機体のスペックリストをよこして。
なにか理由があってふせてるんだと思うけど、
味方の戦力がわからなくちゃ作戦の立てようがない。
指向性通信で暗号強度レベルD以上で送って。
こっちでデコードする。」
「兄様、どういたしますか?」
「指向性通信でかつ暗号強度レベルD以上なら問題ないだろう、
送ってやれ」
「はじめまして、エフィメラです。この子はサリス。
今からサリスのスペックリストを送ります。
暗号強度レベルEで送りますが
解読に問題ありませんか?」
「・・・ない。わたしはルシーダ。それより早く。」
「承知しました。」
暗号強度レベルDっていうのもとんでもない話しだけど
それより上のレベルEでリアルタイムでデコード!?
旗艦の戦術コンピュータでもそんな暗号強度は使わないのに。
「デコードできましたか?」
「・・・え”・・・」
「どうかなさいましたか?」
「な、なんて複雑な設計・・・。
リニアクラフトはいいとしてもフライトモードへの可変に
マルチウエポンシステム?おまけにジェネレータもハイブリッド?
どうやってこんな複雑なのを制御しているの?
・・・あなたは一体誰?何者?」
「アリステアシステムの母体となった戦術AIでエフィメラという。
サイバネティクスチャイルドエミュレーションシステム、
SCES・エフィメラだ。」
「・・・こんなものがすでに存在していたなんて・・・予想外。」
「だから、この機体はアンノウン、存在しないことにしてある。」
そう、今ここに存在してはいけないモノ、それがサリスなのだ。
「・・・エフィメラ、わかってると思うけど・・・・
レヴァードの相手はあなたがしなければならない。
・・・エヴァンと手負いのリオンじゃ、落とせない。」
「ええ、承知してます。」
「・・・ビームランチャーを使って欲しい。フライトモードと
やらで距離を取って、仕留めて。
レヴァードの動きはなんとかあたしたちで押さえ込んで
空間座標を送る。簡単な事。」
「兄様?」
「最善だろうなそれが。ルシーダと言ったな?
承知してると思うがサリスの装備しているホーリースピア、
君のいうビームランチャーの直撃を受ければ下手したら爆散だ。
乗っているんだろ?父君。」
「・・・いまのお父様は正気じゃない、ただそれだけ。
できれば直撃はさせて欲しくない。」
「わかった。善処する。だがこう対峙してる状態で
どうやって距離をとる?
やすやすと離してくれる相手ではないぞ。」
「兄様、セカンドブーストを使えば十分な距離はとれます。」
「セカンドブースト?そんな機能知らないぞ?」
と、通信にジュリアスさんが割り込んでくる。
「わたしだ、レディス。セカンドブーストはサリスの
オーバーブースト使用時にバックグラウンドでチャージして
フラッシュオーバーさせて2次加速させる機能だ。」
「ジュリア、またいつの間にそんなものを・・・」
「とにかく変形できれば距離は稼げる。それだけは保証しよう。」
「わかったよっ!」
ヴィル・ド・リヴァを背にライフルを構えるレヴァードに
対峙するリオンとエヴァン、そしてサリス。
サリスがその鯉口を切った。
ライフルをアサルトモードで乱射しながらレヴァードに
接近するとみせてレヴァードの間合いぎりぎりでAMBACK機動で
急速反転させた。
「いくぞ、オーバーブースト!」
目の前でスラスターを全開にし、レヴァードを吹き飛ばし、
一気に距離を取る。
きっとレヴァードのモニターは焼き付いて一時的に
使えなくなってるはずだ。
「フライトモードチェンジ!」
「了解、フライトモードへシフト。」
レヴァードが状態回復してライフルを構えなおしたときには
もう変形は完了している。
だが、成り行きを見守っていたリオンがフライトモードの
サリスを狙撃する。
「いくぞ!」
「セカンドブースト始動、スラスター・ジェネレータ
第二次臨界点までカウントスタート。
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・兄様っ!」
「セカンドっ!!!」
主翼の後ろ半分ががばっと上下に開き、スラスターの
ノズルが迫り出す。
さらに両翼下に固定されたメインスラスターの開口部
からジェネレータが露出、露出したジェネレータを
包み込むかのように大きな光の輪が基部に収束し、
敵のリオンの攻撃が着弾するかと思われた次の瞬間、
フライトモードのサリスは展開した両翼から光を放ち、
爆発的な加速で一気に弾速すらしのぐかと思われるような
猛烈な速度でソニックウェーブを伴って一気に距離をあけた。
「す、すごいね、ルシーダちゃん・・・」
「・・・同感。」
だが、そのサリスのコクピットでは惨状がひろがっていた。
「ぐっ、、、こ、殺す気か、ジュ、ジュリア!
これじゃGでまともに操縦なんか出来やしない!
エフィ、知ってて黙ってたな?」
「ええ、まぁ。でも指定ポイントまで到達したらわたしが
セカンドブーストは解除しますので
兄様さえ我慢してくれれば問題はないかと。」
「・・・ジュリア、あとでしばき倒すっ!」
サリスの狙撃も追撃も無理と判断したのか、リオンと
復帰したレヴァードがシルフィールたちの前に対峙する。
「・・・・往こう」
「うん!」
使える武器はレールガンとモーターカノン(バルカン砲)だけ。
ルシーダちゃんのエヴァンも致命傷を与えられそうな武器は
持っていない。けど、きっとなんとかなる!
「いくよっ!」
左右に展開しながらレールガンをレヴァードに向かって撃つ!
ベイルでそれを弾くレヴァード。
ライフルの銃身にマジックサーキットが浮き上がる。
「ライフルっ!」
ルシーダちゃんの声を聞いて機体をひねる
ライフルの粒子ビームが今そこにいた場所を正確に通過する。
「エヴァン、パイルバンカー、カートリッジロード!」
レヴァード背面からのパイルバンカー!
だが、その槍はライフルの銃身でそらされ、空を切る。
流れるような動きでエヴァンを蹴り飛ばす。
「・・・ぐっ!だが、まだ!」
右腕に相当する部分が展開し、大きな砲身が現れる。
ドムッ
その砲弾とライフルの粒子ビームが丁度真ん中で激突した。
マルチディスチャージャーから放たれたクラスター弾頭が
爆発し、ディスプレイを真っ白に染める。
エヴァンはその反動でさらにレヴァードとの距離が離れる。
抜かれる!?
そう判断したあたしは機体に姿勢制御をさせ、レールガンを
斉射した。
無理に当てる必要はない。もとよりただの時間稼ぎなんだから。
「アリス、お父様の位置は!」
「「サーチエリアオーバーです。」」
「邪魔だ、どけっ!!」
「!」
レイブレードが機体を襲う。
とっさに脚部のアイゼンでベイルをつかみ、機体を揺する。
なりふりかまわない動きが機体への直撃を防げた。
レヴァードはベイルをつかみこんでいる右足をレイブレードで
切り捨てた。
「あのビームソード、厄介ね。斬りつけられたらかわすしか
できないじゃないの」
「ビームソードか、うまい表現だな。レイブレードという。
レイブレード同士であれば防ぐことも可能だが、それ以外は
確かに防ぐ手だてはないな。
カートリッジがなくなるのを待つしかないな」
「さっきの黒髪のひと?そんな悠長なこと言っていられる状況、
じゃない。」
「指定座標に到達。セカンドブーストカット、モードシフト、
AK。ホーリースピアスタンバイ。
ルシーダさん、目標空間座標の指示をお願いします。」
「・・・承知。いま転送する。」
これ以上の戦闘は辛いか?
だが、そこにエヴァンが再度パイルバンカーを構えて
突っ込んできた。
槍がベイルに突き刺さり、腕部まで貫く!
レヴァードは返す刀でパイルバンカーを装備した
腕部を切り落とす!
「・・・今!銀色っ!」
リオンとレヴァードのサーチ範囲外、戦闘空域の空間状況を
完全に把握してるルシーダちゃんだからできる指示。
サリスは人型に変形しなおし、背部に背負ったホーリースピア、
ルシーダの言うビームランチャーを構える。
長大な砲身のカバーが開き砲身がさらに伸びてロックされ、
カバー部分を覆うように3重のマジックサーキットを展開される。
「バレルカバー展開、マジックサーキット開放、
バレルレプリカ構築完了。兄様!」
「これぐらいで死んでくれるなよっ!」
超遠距離からのホーリースピアでの狙撃。
ルシーダちゃんの情報を完全に共有しているエフィメラ
だからこそできる芸当。
からみついていたあたしのリオンとレヴァードが
デッドウェイトになっていた。
レヴァードが狙撃に気づき、振り払おうとするが間に合わない。
リオンの足がかみついたままのベイルで防御姿勢を取る
レヴァード。
サリスのホーリースピアの光弾はベイルに着弾すると
スピアのごとく光弾から
光の槍がベイルを貫き、機体の右半身と展開していた
セイルごともっていった。。。
レヴァードはコクピットまで露出している。
誘爆しなかったのはジュリアスさんの設計が功を奏したと
いうことなんだろう。
だが、ジェネレータの出力がみるみるうちにおちていき、
リニアクラフトの力場を維持できなくなり、機体が揺らぐ。
すばやくエヴァンがレヴァードに近づき、機体を支えようとする。
「お父様、いま助ける!」
だが、レヴァードはいつの間にか手にしたレイブレードでエヴァンの腕部に
相当する部位を切り捨てた。
「!」
力場をなくしたレヴァードはエヴァンの、ルシーダちゃんが
差し伸べた手を文字通り切り落とし、支えをなくした
レヴァードは暗い、暗い漆黒の闇の中へと消えていった。
「お父様っー!」
虚空にルシーダちゃんの声が響いた。。。
・・・その後、5機のAKとリーダーを失った空賊は全面降伏の
スターマインを打ち上げた。
「それじゃ、レスティアでまた会おう」
そう言うと白銀のAK、サリスはフライトモードで急速に
離れていった。
あたしは呆然として動こうともしないルシーダちゃんの
エヴァンに近寄り、
レールガンを背部にマウントすると自由に動く左腕で
エヴァンを支えた。
「・・・帰ろう、ルシーダちゃん。」
「・・・。」
ルシーダちゃんは特に返事をするでもなく、
また抵抗するでもなく一緒にヴァーミリオンの甲板に降着した。
兵士達がエヴァンに向けて銃を一斉に構える。
だが、格納庫にやってきたジュリアスさんが下げさせた。
あたしはリオンから降り、エヴァンのコクピットを開けた。
ルシーダちゃんは降りてこない。
聞こえるの小さな小さな嗚咽。
あたしはコクピットの中に入り、シートでうずくまって
小さな嗚咽をもらす彼女のとなりにたち、肩に手をやった。
「いまは泣いてもいいんだよ。涙をながしてもいいんだよ」
うつむいた顔を瞳を怖々とあたしのほうに向ける。
「ルシーダちゃん。いままで、がんばったね。」
彼女はあたしの胸に飛び込むと堰を切ったかのように
大粒の涙を流し、声にならない声をあげた。。。。
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少しでも気に入ってくれたらボタンを押して頂けると嬉しいです。
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