そして続く明日の世界へと−・第1章

第1章 旅のはじまり

 暗い闇の中、船が集光セイルを展開してそのセイルが煌き、
船体からは低いジェネレータの動作音が響いている。
船体は地上200mくらいを滑空しヴァスティール砂漠の砂丘を
飛び越えていく。
遥か彼方に見える街並みはサウスエリア最大の自治都市、
ヴァスティール。
そう、あたしはいまヴァスティールの隣町にあたる宿場町、
エルディから飛装帆船の定期便シャトルに乗ってヴァスティールに
向かっていて、船の展望デッキで代わり映えのない景色を
楽しんでいる。なにもめずらしいから、というわけではない。
月に2度ほど魔術の鍛錬のためにヴァスティールには通っているが、
あたしはこの飛装帆船という空を飛ぶ船、ことに空を飛ぶということが
好きなのだ。
だからいつも係留作業のある出航時と入港時を除いては
デッキで景色を楽しむことにしてるのだ。

飛装帆船は集光セイルとよばれる帆から得たフォトンを
ジェネレータで圧縮し、エネルギーコンバータで出力を変換、
リニアクラフトと呼ばれる飛行ユニットを稼動させる文字通り、
空を飛ぶ乗り物だ。

今乗っているシャトル便は便宜上そう高い高度を取る事が
出来ないが、最新の飛装帆船は雲の上を飛ぶことができるそうだ。
きっと今回はヴァスティールにつけばほどなく噂に聞く雲海を
みることができるだろう。
期待に心が躍る。

あたしの名前はシルフィール。
シルフィール・ファルク・シュナイザー。
ヴァスティール地方でも指折りの名門、シュナイザー家の長女だ。
漆黒の瞳、つややかな黒の長髪をひとつにゆったあたしは、童顔であるが
ゆえにいつも実年齢よりも2、3歳は若く見られるけどこれでも
一応は十五歳になった。
未だに友人達と比べてもぺったんこな幼いからだが少々の
コンプレックスではあるけれど。

そんなあたしは宿場町エルディのマイヤーおじさんのお店で居候中。
お父様とは仕事上の都合ってやつでもう幾年も会ってない。
でも、格式ばった礼儀作法とかにしばられてない今の生活に
不自由はない。

あたしのお父様は「麗騎士」ことロードス・ファルクの息子、
「二代目麗騎士」。
さらには剣士としての最高の称号、「剣聖位」を持つ。
銀髪翡眼、長身痩身にして長髪の超あたし的に美形でいて
しかも優しくそして時に厳しい、文句なし自慢の父だ。

でも、さっき言ったとおり、お父様いまここに、いない。
お父様と一緒に暮らしたのは実質二年ほど。
二年前に一度会ったきりで、お父様は北方の中枢都市
レスティアの連邦評議会の議員としてレスティアで
引き続き仕事をしてると風の便りで聞いた。

そしてあたしはいまだ、お父様が幼少の頃からお世話に
なっていたというマイヤーおじさま夫妻のもとに身を
寄せているのだ。

マイヤーおじさんはリサイクルショップを経営している。
ひとことで言えばリサイクルショップ。
けど、その取扱商品の幅はとてつもなく広い。
家庭用の雑貨品はもとより、機動ユニットなんかも取り扱ってる。
あ、機動ユニットというのは二足ないし四足歩行が出来て、
人の手に相当するアームを持っていて汎用的な作業が出来る
搭乗型のロボットのこと。
・・・まぁ、ここにあるものはほんとに動くのかどうかなんて
知らないし、あたしの目から見ればただのガラクタにしか
見えないけれど、みる人が見れば、それなりの価値はあるらしく、日中の
この時間帯を除けば店は、まぁ繁盛してると言っていいだろう。

この物語はそのジャンク屋であたしが店番をしていたところから
はじまる。
第2章へ



少しでも気に入ってくれたらボタンを押して頂けると嬉しいです。

戻る

そして続く明日の世界へと−(2008/01/20)
Copyright (c) Yosuke Tanaka All Rights Reserved.

Messenger:akakuro@homail.com