暁の空を越えて・エピローグ

エピローグ


こうして、ドゥガル大公のもくろみはお父様のおかげで水泡と消えました。
え?その後どうなったかって?
 救出されたおばさま、エルフィア妃は今まで通り、
ヴァスティールを統治することになり、ヴェスタル・ラ・ギルドは
ギルドマスターが不在になりました。
アリステアさんとクローディーヌさん、あの二人に匹敵するヴェスタルは
いなくてアリステアさんのあとを継げるひとはいなかったということね。

 そうそう、あの日お父様にかしづき、忠誠を誓ったヴァルタァさんは
お父様の命じたおとり同志を集め、反旗を翻しドゥガルに与した兵士達を鎮圧、
おばさまを救出し、ドゥガル大公の悪事をすべて明るみに出したの。
そしてテンペストに乗り込もうとしていたドゥガルと剣を交え、一矢報いたとのこと。
さらには新鋭艦・ヒューベリオンでサリス起動までの時間稼ぎをしてくれたことは
よく覚えている。乗組員を全員降ろしてテンペストに一人特攻をかけたことも。
「我、民ヲ守ル騎士ノ礎トナラン」
彼は殉職し、二階級特進とダイヤモンド剣付き柏葉十字章が与えられた。
あのひとが本当に民衆を守る騎士の礎となれたのかはわからない。
でも、そうであって欲しい、そうココロから思う。

・・・で、あたしとお父様はというと・・・・

 ここはセルティア城の中庭。中庭には修理の終わったセンチネルとサリスがある。
「さぁ、写真を撮りますよ」
と、マイヤーおじさんがカメラを三脚にセットする。
「エフィ、サリスを片膝立ちにしてくれ。で、みんなが乗れるように手を
下げてくれるか?」
これはお父様。
無論、コクピットは無人。
でもそこから声が響く。
「承知しました、兄様」
「そうだな、どうせだから城をバックに撮りましょうか。
姫、そのままの体勢でこっちを向いて・・・そう、それでいい
さ、乗ってくださいシルフィ、レディス様。」
「はい、マイヤーおじさん♪」
ジュリアスさんは立て膝をしたひざの部分に立ち、サリスの胸部に手をやった。
「姫、ジュリアス様と同じぐらいの高さまで手をあげて・・・そうそれでいいです。」
親子三人をのせた手がコクピット付近まであがる。
「よさそうですね、じゃ、撮りますよー?」
センチネルのコンテナの上からカメラを構えるのはもちろんマイヤーおじさん。
「いちたすいちはー?」
べたなネタにおもわずしかめっ面をするジュリアスさん。
「マイヤー、それはないだろう、今時分・・・」
「いいじゃないですか、ジュリアス様。こういうのが一番良い笑顔になるんですよ」
「じゃ、気を取り直して、もう一度いきますよー、いちたすいちはー?」
「「に」」
パシャッ
「うん、最高の写真が撮れた。親子二人にしかめっ面のジュリアス様が
実に良いアクセントだ」
苦笑するお父様。
「さて、そろそろ行くよみんなを降ろしてくれ、エフィ」
「はい、兄様。」
お父様はぴょんと飛び降りるとセンチネルのゲートの操作を始めた。
ジュリアスさんはコクピットに顔を突っ込むと無人のコクピットにこう言った。
「エフィメラ、しばしの別れだ。ろくでもない奴だが大事な弟だ。
面倒を見てやってくれ」
「わたしにとってはどちらもろくでもない兄にみえますけどね」
「ははは、違いない。」
「エフィメラ、格納するぞー?」
「はい、兄様。」
サリスがセンチネルに乗り込み、ハンガーが降りてサリスが格納されてゆく。
「お父様っ!」抱きつくあたし。
「フィール。こんなごたごただったけど、君に出会えて良かったよ。
今度はいつ会えるか解らないけど、今よりもっと綺麗になった
君に逢えるのを楽しみにしているよ。今回は君の魔術にだいぶ助けられた。
精進しろ、とは言わないが持てる才能は伸ばすべきだ、と思う。」
お父様はあたしを抱きしめ、髪をなでながらそう言ってくれた。
「うん、それにそのときまでにもっともっと綺麗になって、
高位なヴェスタルになれるようにがんばるわ」
ぎゅっと強く抱きしめてくれたあと、少しからだをはなすと、
お父様はいつもにくいっと顔をあげさせるとあたしのひたいにキスをしてくれた。
あたしも背伸びをしてお父様のほほにキスをする。
「じゃ、行くかな。マイヤー、フィールのことを頼む。」
「道中、気を付けて、レディス様。」
お父様がセンチネルに乗り込み、ジュリアスさんに声をかけた。
「城と母上を頼む、ジュリア」
「わかってる。」
セイルが展開しセンチネルのジェネレータがうなりをあげる。
「それじゃ、またな」
別れの言葉。
「わたしは、二度と消えることのない理解と絆の光を心の中にともします」
「マグナ・エスト・ヴェリタス・エト・プラレヴァレット
(真実は偉大にして常に勝つ)」
お父様とジュリアスさんはにやりと笑みを浮かべた。
こうして、システムとなったエフィメラさんを乗せて、お父様は旅立っていった。




今日も外は暑そうだ。
気温、40度は軽く越えてるんじゃないだろうか?
ここヴァスティールシティの北西にある宿場町、「エルディ」の
まわりは広く、広大な砂漠、砂海・・つまりは砂の海が広がっている。
街中ならともかく、一歩でも街をでようものなら外気温は50度や
そこらじゃすまない。
だから、ここ「エルディ」に住む人間は日中、ことに日が一番高い
この時間には出歩いたりしないのだ。
ここはマイヤーおじさんのお店。
ひとことで言えばリサイクルショップ。けど、その取扱商品の幅は
とてつもなく広い。家庭用の雑貨品はもとより、機動ユニットなんかも取り扱ってる。

ぼーん。ぼーん、ぼーん・・・・
柱時計が3時を告げる。
あたしは席を立ち、柱時計の下までてくてくと歩いた。
柱時計から垂れ下がる鎖をつかみ、引いた。
じーっ。
何度も引く。
じーっ。じーっ。じーっ。
今時、こんな時計を使ってるところなんてこの店ぐらいのものだろうに。
そう毎日この3時の鐘のあと、柱時計の鎖を引いてぜんまいを巻きなおすのも
あたしの大事な日課のひとつ。

シューっという音と共にドアが開き、外の熱気と砂埃が背中の
入り口の方から舞い込んだ。
お客様が来たようだ。
カウンターにはあのときマイヤーおじさんが撮ってくれた写真が一枚。
あたしはお父様に微笑んで、ココロからの笑みを浮かべ、
あたしはやってきたお客様に声をかけた。
「いらっしゃいませ!どのようなものをお探しですか?」


 おだやかな日常、今までと変わりない毎日。
でもあたしは一歩、いや半歩かもしれないけれど、
前へと進むことが出来たような気がする。
結局のところ、人が成長出来るか否かはこうした日々の積み重ねと、
ちょっと変わった日常を自分の力で乗り越えられるかにかかっているのかもしれない。
人工的に生み出されたサイバネティクスチャイルド、エフィメラ。
でも世の中には彼女とは異なり生を受けたときからその力を持つ人たちが、いる。
彼らが表舞台に出てくることがあるのかどうかはあたしにはわからない。
けれど、いつかそんな日がやってくる、漠然とだけどそう思えた。

今日もまた日は昇り、砂漠の彼方に太陽は沈むのだ。
一日の終わりは遥かなる地平に日は沈み、そして夜のとばりが降りた。



						FIN



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暁の空を越えて(2007/06/11)
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