暁の空を越えて・第9章

9「テンペストとヒューベリオン」


ここはテンペストのバトルブリッジ。
血まみれのドゥガルがバトルブリッジに現れる。
それに付き添う執事。
「ドゥガル様!?、そのお怪我は・・・?」
「ヴァルタァが乱心した。キャデラック艦長、衛生兵を呼んでくれ。治療を頼む。
それと出航した船はないか?賊が混じりこんでいる。」
『数分前に正門付近から郊外に向けて出航したケッチが一隻おります』
「それだ。それと賊を追うぞ、機関を始動させろ。」
『衛生兵、ドゥガル様の手当を!出航する、機関始動!
ロアーメインローター始動、アンカー巻き上げ開始!』
テンペストのキャプスタン(索巻き機)が回転をはじめ、錨鎖が
ゆっくりと巻き上がりはじめる。
『アンカー・アッペンダウン・サー(立錨)しました!』
『アンカー抜錨、機関微速後進!集光セイル展開!本艦はこれより
さきほど逃亡した小型船舶の拿捕任務にあたる。コンディション・オブ・レッド発令。
各員は持ち場にて交戦準備せよ。
繰り返す、これは演習ではない。
小官は各員の本分を全うすることを期待する。』

「よし、出航前に忌々しいヴァルタァを仕留めろ、見せしめだ。桟橋を砲撃しろ。」
『はっ、承知致しました!ロアーガンデッキに伝達、砲撃準備、
目標は真下にある桟橋だ』
『砲撃準備、俯角いっぱいにとれ!』
最下層甲板よりテンペストの主砲がせり出し、旋回し照準が合わせられる。
『砲撃準備完了、目標捕捉』
「撃てぃ!」
テンペストの主砲の直撃を受けた桟橋は迫撃砲の準備をしていた残った兵士達を
あとかたもなく消し去った。

『艦長、城塞砲が動いています!』
「ヴァルタァの置きみやげだろう、ついでだ。吹き飛ばしてしまえ。」
意外な命令に驚き艦長をみる砲術長。
肩をすくめる艦長。
『続いてロアーガンデッキに伝達、砲撃準備、目標、1時の方向。
セルティア城城塞砲!』
『砲撃準備了解』
俯角いっぱいをとっていたロアーガンデッキの主砲が再び旋回し、照準を合わせる。
『砲撃準備完了しました!』
『主砲、撃てッ!』
城塞砲とテンペストの主砲がほぼ同時に火を吹いた。
テンペストの主砲は城塞砲に直撃し、火薬庫に引火、大爆発を引き起こした。
一方で城塞砲が放った砲弾は照準が十分でなかったのか、テンペストのバトルブリッジを
かすめ、遥か彼方で爆散した。
『他の城塞砲の様子はどうだ?』
『動きは見あたりません!』
『よし、出航する。機関微速後進』
『機関微速後進、サー・イエッサー。集光セイル展開準備よろし!』
『キャプスタンに伝達、「アップ・アンカー(錨揚げ)」』
『ヘッドスル(艦首帆)展開よろし!操帆手、各トプスル(中横帆)
及びコース(大横帆)展開せよ!』
テンペストのバウスプリットと4本のマストからクリアアモルファスに
フォトン粒子を封じ込めた外燃焼機関である集光セイルが展開される。
推進用の二基の四重反転プロペラがゆっくりと回転を始める。
『艦首回頭、ハード・ア・ラーボード!(取り舵いっぱい)
ステディアズシーゴー(ようそろ)』
『ハード・ア・ラーボード、ステディアスシーゴー』
副官が復唱する。
『機関、微速前進、港内離脱後、同時に最大戦速!』
『サー・イエッサー』
メンマストの楼頭にはためくペンダント(長旗)。
『ブリッジへ、アンカー固定完了しました』
『よし、ミズンマストへ伝達、軍艦旗揚げ!』
400mの巨体が、世界最大最強の戦艦が今、艦首を
逃走するセンチネルに向かって徐々に回頭していった。


HUD(ヘッドアップディスプレイ)に"EFIMERA SYSTEM Stand by Rady"
と表示され、あたしのまわりにいくつものHUDが立ち上がる。
「対物、対熱、対衝撃、アクティブセンサー、モーションセンサー及び、
レーダー、ECMコントロールオンライン、センサーシステム、
レベルAにて起動完了。兄様、テンペストが抜錨、出航を確認しました。
現在相対速度+200、接触まで8分30秒。」
テンペストは出航直前に2度主砲を発砲しています。
うち一発は桟橋に命中、もう1発は城塞砲を破壊しています。
状況を知らせる間にもHUDをコンソールから操作する。
「ちっ・・・想定しいたより敵の動きが速い!
ヴァルタァは間に合わなかったか?」


『艦長、まもなく回頭が完了致します!』
『港内ブイ通過しました』
『フォア、メン、ミズンマストにロイヤルスル展開、機関最大戦速!
バウチェイサー(艦首追撃砲)1番から2番スタンバイ。
レーザー照準開始!ロックオンと同時に撃ち方はじめ!』
『ロイヤルスル展開します。ジェネレーター出力上昇。』
ロイヤルスルが甲板上に展開される。
『各ロイヤルスル展帆完了しました』
2基の四重反転プロペラが轟音とともにその回転数をあげる。
「賊は麗騎士だ。遠慮はいらん。撃ち落とせ」
麗騎士と聞いてざわめくブリッジ。
「復唱はどうした?」
『バ、バウチェイサー、スタンバイ!撃ち方用意!』
セイル、ロイヤルスルのフォトンファイバーに光が走る。
副官の復唱がバトルブリッジにこだまする。

ひとつのHUDが赤く染まる。
「兄様、テンペストが回頭しています。バウチェイサー、
まもなく射界に入ります。カウント、8・・・・7・・・・・
6・・・・5・・・・4・・・3・・・2・・・1、
直撃コース! なっ!?ヒューベリオン!?」

センチネルとの間に割り込んだのは一隻のフリーゲート艦だった。
バウチェイサーの射線上に全速で突っ込んできて砲門を全て開き
テンペストに対峙した。

『撃ち方やめっ!』
「・・・何故撃つのをやめた、キャデラック艦長。」
『しかし、あの艦は・・・』
ヒューベリオンのマストが発光信号を送る。
『発、ヒューベリオン。宛、テンペスト艦長レイ・キャデラック。王都反逆罪ニテ、
ドゥガル公を逮捕スル。貴艦ハ速ヤカニ停船スベシ。』
ざわめくブリッジ。
「血迷いおったか、ヴァルタァめ。ん?・・・なにをしている、即刻排除しろ」
『しかし、あの船は新鋭のフリーゲートで・・・』
「かまわん、我らの任務は賊を追うことだ。邪魔なものは排除しろ。」
「・・・聞こえなかったか?排除しろ。」
対峙するヒューベリオンとドゥガルを見比べていた艦長は
苦虫をかみつぶしたような表情で答えた
『・・・承知しました。』
『バウチェイサー用意!目標、ヒューベリオン、マスト群!
船体には当てるなよ!!レーザー通信、貴艦ハ本艦ノ進路上ニアリ航路ヲ譲ラレタシ』
「甘いな。キャデラック艦長。」
『ご命令は撃沈ではなく排除だったと記憶していますが?』
「まぁいい。盾なすものはすべて排斥せよ」

「ヴァルタァ殿、通信電文です。宛ヒューベリオン艦長、発信、テンペスト艦長
レイ・キャデラック。本艦は任務遂行中デアル貴艦ハ本艦ノ進路上ニアリ航路ヲ
譲ラレタシ」
『あくまでしらを切るか、ドゥガル!』
「センサーに反応、テンペストバウチェイサーが起動しています!」

『対ビーム攪乱幕射出っ!新鋭艦なんだ、一撃ぐらい耐えて見せろっ!』
艦舷からランチャーが射出され、拡散する。それはきらきらと輝くあたかも
舞い落ちる砂漠に舞う雪のようなベールだった。

「敵艦発砲っ!直撃コースです!」
ビーム攪乱幕に出力を落とされたバウチェイサーだったが、世界最強の戦艦の
砲撃をふせぎきれるわけがなかった。
だが、実弾による砲撃ではなかったことが幸いした。
『くっ、なんとか耐えたか!?損害の報告を!』
「レフトミズンマストがやられました!荷電粒子の影響で電子機器に異常が
発生しています!」
『ダメージコントロール班を回せ!レフトミズンはパージしてかまわん!
左舷砲列の射撃は可能か!?』
「火器管制が一時的にダウン!ブリッジからのコントロールは不能です!」
『アッパーガンデッキ、掌砲長に通達!各個の判断にて討て!目標、テンペスト!』

「掌砲長殿、ブリッジからの通達です。各個の判断にて討てとのことです!」
「あの御仁なかなか無茶をしおる。いいだろう各砲、目測射撃斉射用意!よく狙えよ、
まぁもっともあの図体だ、撃てば当たる!左舷斉射、3、2、1撃てッ!!」


「ヒューベリオンの発砲を確認!テンペストの被害は現在確認中。」
『バウチェイサーをビーム攪乱幕で防ぎきったのか!?』
「いえ、兄様。いまレフトミズンマストのパージを確認。
いまの射撃もレーザー照準射撃ではありませんでした。おそらく
火器管制になにかかしらのトラブルを生じたものと思われます」

「ヒューベリオン発砲!直撃、きます!」
12門のレールキャノンが船体に突き刺さる。
それぐらいの攻撃では、ヒューベリオンが搭載している口径のレールキャノン
ごときでどうにかなるような船ではない。が、当たり所がよかったようだ。
「バウチェイサー、出力ダウン!射撃不能!」
『ダメージコントロール班をまわせ!ハード・ア・ラーボード!(取り舵いっぱい)
右舷砲列、アッパー、セカンド、ミドル、ロアーガンデッキ射撃準備!
射界に入り次第各個砲撃を開始せよ!』

「よし、バウチェイサーは止めたな?これで少しは時間稼ぎが出来る!!
使える集光セイルを全て解放しろ!同じ手は二度と使えない!船足を止められたら
最後だ、本艦程度のフリーゲートなぞ一撃で落とされるぞ!上手回し用意!
アフターバーナを使え!」
「了解!全集光セイル解放!アフターバーナ点火、4・・・3・・・2・・・1点火!」
ヒューベリオンは新鋭の高速フリーゲート艦だ。マストはバウスプリット、フォア、
メイン、ライトミズン、レフトミズン、センターミズン、の6本。それに展開される
集光セイルは全部で17枚。
全てのセイルを展開したヒューベリオンは艦尾に備わったノズルから
アフターバーナを点火し、急速回頭をしながらテンペストとの距離をとり、投影面積を
最小にした。

テンペストは巨大飛行船に武装をした戦列艦だ。
戦列艦とは浮き砲台となって斉射を行える艦のことを指す。
よって100門を超える砲のほとんどは艦体の両側面にそって設置されている。
例外が艦体の前後に設置されたバウチェイサーとスターンチェイサーだ。
名が示すようにバウチェイサーは追撃砲、つまりは敵を追撃するときに
利用されるものだ。
このバウチェイサーが使えないとなると艦首を振って、艦首寄りのガンデッキに
ある数門のレールキャノンを使ってごく限られた狭い射界で追撃しなければならない。
けれどレールキャノンの1門でも当たりさえすれば致命傷を与えられる。
戦力差はそれだけ絶大なのだ。
ヴァルタァがとった行動、攻撃後に自艦の投影面積を最小にしその場を離脱、
再度の攻撃の機会を窺う。
これは一撃離脱を旨とするフリーゲート艦の戦い方のセオリー通りだ。
だが、一介の騎士と本職のたたき上げの艦長。その技量の差がこの局面で現れた。
キャデラック艦長はヒューベリオンを追わず、その場で回頭させ、片舷全ての
砲を射界におさめたのだ。
その数、60門。
・・・そしてヒューベリオンはアフターバーナを使って加速したものの
未だ有効射程距離内。
テンペストの片舷斉射が行われた。
投影面積を最小にしていたこともあり、その無数の砲弾はアフターバーナを全開にした
ヒューベリオンのスターン(艦尾)を直撃をした。
爆散するスラスター群。被害はそれだけにとどまらず、船として一番重要なマスト群も
軒並みなぎ倒した。
残ったのは艦首側、バウスプリットの数枚セイルのみ。
こうなれば集光セイルによるフォトンエネルギーを推力、浮力として用いる艦にとっては
生命線を断ち切られたに等しい。

「エフィ!レーザー通信だ!ヴァルタァに投降するよう指示しろ!」
「承知しました。・・・あ、兄様、テンペストからの発光信号です。」
「読み上げろ」
「発、テンペスト艦長レイ・キャデラック。艦ヲ放棄シ、戦線ヲ離レ進路空ケヨ。
此方ニ撃沈ノ意志無シ」
「艦長はあのキャデラックか・・・」
「兄様、ご存じで?」
「あぁ。あれほどの船乗りはこのヴァスティールにはいない。」
「ヒューベリオン、回頭しています! 待ってください・・・艦舷にカッター(小型艇)
を確認。乗員の離艦をはじめたようです。」

回頭?単に投降するのであれば回頭の必要はないはずだ。
それが何故?・・・まさかっ!?

「カッター、艦舷を離れます。大部分の乗組員の安否は無事のようです・・・・
ヒューベリオン、テンペストに向かって加速をはじめました!
艦尾より発光信号!『我、民ヲ守ル騎士ノ礎トナラン』」
「ヴァルタァ!!」

だがその声は、悲痛な叫びは彼には届かなかった。
いや、たとえ届いていたとしても彼の意志はかわりはしなかっただろう。
テンペストの艦舷に突撃を開始したヒューベリオン。
キャデラック艦長の心中は如何ばかりだったであろうか。
ヒューベリオンの乗組員の乗ったカッターが艦から十分に離れたところで
テンペストの縦射が始まった。斉射でないのは断念してくれるかもしれないという
キャデラック艦長のかすかな願いだったのか、それとも・・・。
テンペストの艦首側からアッパー、セカンド、ミドル、ロアーの4門ずつの
レールキャノンが特攻をしかけるヒューベリオンに突き刺さってゆく。
そしてわずか3列の縦射が終わった時点でヒューベリオンはすべてのセイルを失った。
だが、かろうじて生き残っていたバウチェイサーが反撃をする。
たった2発の砲弾。
命中すらしなかった。
けれど、その反撃が命運を分けた。
あくまで屈さぬ対抗の意志を見せたヴァルタァ。
縦射がやむ。
わずかな沈黙。
次の瞬間、テンペストの片舷斉射がヒューベリオンを襲い、彼は艦とともに
群青の空に散った。

「・・・ヒューベリオン、ロスト。」
「ヴァルタァ・・・・くっ・・・」
そしてテンペストはまた動き出す。
「テンペスト、回頭をはじめました。再度バウチェイサーを使うようです」

「あいつの死を無駄にはしない!発砲までのカウントを!」
「9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・敵艦発砲!」
「マイヤー、偽装を排除しろっ!急速上昇!アップトリムいっぱい!」
ドムッ
お父様が言うが早いか、センチネルは白煙に包まれた。
ふわり、という奇妙な浮遊感。
「相対距離+100デルタ、バウチェイサー、来ます!」
粒子ビームは確実に直撃コースだった。
だが、偽装を排除して軽くなった船体は今までいた場所よりも
わずかに"浮いて"かわした。
吹き飛ぶはずだったセンチネルのかわりに偽装が吹き飛ぶ。
「マイヤー、めいいっぱい速度を上げろ!次弾がくるぞ!
スタンスル(補助帆)も展開させろ! アフターバーナ、点火!」
偽装を排除し、余分なウェイトのなくなったセンチネルは
両舷斜めにマストを展開しスタンスルが広がり、ジェネレータが
うなりをあげ、偽装で隠されていたスラスターが咆哮をあげ、
さらに速度を上げる。

『敵船、バウチェイサーの直撃を回避しました!
スラスターを搭載していたようです敵船相対速度あがりました!』
『見事。だがそのまま逃がすわけにもいかんな。
1番から10番まで対MBT弾を装填、射撃準備!』
『サーイエッサー。現在VLSに対MBT弾をローディング中。
レーザー照準、準備よろし』
『撃てっ!』
10基のVLSのハッチが一斉に開き、ミサイルがセンチネルに迫る。
『さらに船足を稼ぐぞ!スタンスル(補助帆)展開、推力全開、
敵船との距離を保て!』
テンペストにスタンスルが展開し、セイルに光が走る。
推進用の四重反転プロペラがうなりをあげる。
さらに速力を増すテンペスト。

「テンペスト、対MBT弾の発射を確認、直撃コースです。
ジャミングシステムオンライン、ECM起動、コンテナハッチ一部開放、
フレア射出します。」
大きな弧を描いてやってきた対MBT弾はフレアに向かい、爆炎をあげる。
あたしがコンソールをものすごい速度で打つ度にいくつものHUDが
黄色からオンラインを示すグリーンへとかわってゆく。
「兄様、加速を開始しました。テンペスト、第一戦速まであと2分10秒、
主砲射程・射界まであと4分!」
「火気管制システムオンライン。兄様、武装の選択を。」
「ショットライフル、それにディザスターを。
あと使うかどうかわからんがホーリーランスを頼む。」
「了解しました。ショットライフルマウント、ディザスター、
メインマストに2基装備します。
対艦兵装としてホーリーランスを背部マウントラッチにセット。
ニュークリアカートリッジ、セット完了。ショットライフル、
ローディングを開始します。完了まであと20秒。スペアリボルバー、
ローディングします。」
今、目の前にあるHUDに武装が装備されていく様子がライントレース
されて表示されていく。


突然、別なHUDがPOPUPし、赤色で警告を促す。
「兄様、テンペストの格納庫の展開を確認。機動ユニットです。数、4!
テンペストのデッキより降下を確認。接触まであと3分30秒、
敵機種名が判明しました。アルザードタイプです。
敵機動ユニットの相対速度が上がりました。
オーバーブーストの使用を対熱センサーにて確認。
敵有効射程まであと2分です。」
「ちっ」舌打ちするお父様。
いかに"銀の剣"が優れた機動ユニットであっても起動できなければ
このセンチネルを含めてただの鉄の棺桶も同然だ。
「エフィ、すべてをオンラインにしなくても良い。
とにかく動かせる状態にしてくれ!」
「承知しました。機体制御を最優先にセットアップします。」
入れ替わるHUD、次々にレッドからイエローへ、イエローから
グリーンへとかわってゆく。
そのとき、また別のHUDがPOPUPし、再度の警告を促した。
「兄様、テンペストが再度バウチェイサーを使うようです。
ENGセンサーがとらえました。光学映像、出ます。」
投影される画面にはバウチェイサーの照準が調整されて動くのが見てとれる。
今度は8門全部!?

『艦長、バウチェイサー、まもなく射程にはいります!』
『レーザー索敵開始、バウチェイサー、発射準備!』

「バウチェイサー、ロックオンサーチ来ました。現在ECMを
最大出力にて稼動、ジャミングを行っていますが、
このままでは時間の問題です。」
「マイヤー、センチネルの速度をめいいっぱいあげろ!
高度を可能な限りとれ!エフィは発砲のタイミングを教えてくれ。
発砲と同時にリニアクラフトを解除して急制動をかける!
バウチェイサーが粒子ビーム砲ならかわせるはずだ!」
リニアクラフトというのは地磁気感応型のフライトシステムのこと。
「テンペストからのレーザー照準、来ました。
ロックオンを確認。敵艦発砲!」

『艦長、バウチェイサー、全門射程にはいりました!』
『バウチェイサー、はずすなよ、撃てぃっ!!』
バウチェイサーに光が集まり、刹那、8本もの光の矢がセンチネルに襲い掛かる!
ゴゥン
ヒュォォォンン・・・・
リニアクラフトの出力カットとともに浮遊力がなくなり、
地面に船底が地面に着底し激しい衝撃が襲い掛かってきた。
200数十キロちかくの速度で飛行していたセンチネルが
無茶とも言える急制動をかけたおかげでバウチェイサーはセンチネルをかすめ、
目の前の大地を大きくえぐりかえした。なんとかやりすごすことができたようだ。
でもこれで敵機動ユニットとの差がより迫ったことになる。
「マイヤー、ジェネレータ出力全開、高度を取れ!アップトリムいっぱい!
機動ユニットに囲まれるぞ!」

『CIC、状況報告を!』
『巻き上げた砂塵が邪魔して確認不能です。いま光学映像に切り替えます!」
『ダメです、全弾、かわされた模様!敵機依然逃走中!』
『くっ、やるではないか、だがこのまま逃がすわけにはいかない。
ハード・ア・ラーボード(取り舵いっぱい)、アップトリム15!
右舷砲列による一斉射撃を行う!射撃準備!』
『サーイエッサー』

バンクしつつ回頭するテンペスト。
ジェネレータがうなりあげ、センチネルが再度浮遊し、加速し始める。
あれだけの無茶な操縦にもなんとか耐えているようだ。
「兄様、敵機動ユニットの有効射程に入ります! アルザード、A(アントン)、
B(ブルーノ)、C(カイザー)、D(ドーラ)、ミサイルランチャー発砲!
フレア、射出します」
センチネルの後部のゲートからフレアが射出される。
この手のミサイルはより大きな熱源に向かって飛ぶ。
エフィメラさんの対応はとても適切だ。
案の定、ミサイルはフレアに向かって飛び、爆発を起こした。

「兄様、センチネルのスターンチェイサー、射界にはいりました。」
「12ポンドレールキャノンだ。当たれば確実にアルザードは行動不能にさせられる!
照準を頼む。トリガーはわたしがひく!」
「スターンチェイサー、スタンバイ!レーザー照準を開始します。
5・・・・4・・・・3・・・2・・・1・・・兄様!」
「当たれぇっ!」
機動ユニットは柔軟な対応を取ることが出来ない。
スターンチェイサーは1機のアルザードに直撃し、行動不能にせしめた。

こちらにも武器があることを知ったアルザード隊は
直線行動をやめ、回避運動をしながらセンチネルに迫る。

「アルザードからのレーザー照準を確認、ロックオンされました!
ロケットランチャー、来ます!」
無数のロケット弾が・・・センチネルを襲った。
右舷のスタンスルのマストが折れ、メインマストもバウスプリットも
まっぷたつに折れている。
艦尾を狙われなかったのが不幸中の幸いだ。
「マイヤー、スタンスルとメインマスト、バウスプリットもパージしろ!
ミズンマストさえあればまだ飛行は可能だ!」
すぐさま各パーツがパージされる。
飛行は可能でもかなりの損害だ。
ジェネレータの出力もかなり落ちている。
船足もそれにともなってそれなりになってしまっているし、
高度も維持できなくなってきている。
「両舷のレールキャノンを射撃準備しろ。砲門開け!」
照準はつけなくてもいい、バンクの俯角めいいっぱいで撃て!
「マイヤー、右と左、双方に船体をバンクさせろ!時間を稼ぐ!」
船体が右へ大きく傾く。
その瞬間に4門の主砲、18ポンドリニアキャノンが火を吹いた。
ホバーで追跡していた3機のアルザードが土煙に包まれる。
その瞬間、赤い警告のHUDがPOPUPする。「兄様、上!」
ジャンプした1機のアルザードがセンチネルの上空、しかも死角にいた!
マイヤー、前言撤回、もう一度右へバンクさせろ!仰角めいいっぱいで撃ち落とす!」
続いて船体が再度右に大きく傾く。4門の主砲が上空のアルザードに向けて火を吹く。
4発の砲弾のうち、一発が左腕部に命中した!
左腕部を失い、大きくバランスを崩すアルザード。
しかし、そのアルザードはこともあろうかスラスターでセンチネルに突撃をしてきた。
マイヤーおじさんが大きく舵を取るが、間に合わない!
船体の中央付近に体当たりをかますアルザード。
センチネルの船体が大きく揺れる。
そしてアルザードは残った最後のマスト、ミズンマストをアームでへし折った。
出力を失ったセンチネルはそのままゆっくりと降下していき、ついに砂漠に不時着した。


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暁の空を越えて(2007/06/11)
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