暁の空を越えて・第8章

8「ヴァルタァ」


レディス様より受け取った剣をひっさげて、階段を駆け下りる。
身体が軽い。いや、軽いのは高揚しているのは心か。
忠信を誓うことでここまで心が躍るとは。
改めて麗騎士の、剣聖位を持つあのお方の力を知る。
向かうのは西翼の兵士詰め所。
扉を開けると衛兵達がまばらにいた。
「ヴァルタァ殿、そんなにお急ぎで如何なされましたか?」
「至急、集められるだけの人数を集めてくれ。テンペストの復旧にまわってる人間もだ。
話しがある。」
「何事でございましょうか?」
「とにかく皆を集めてくれ。」
「承知致しました。非常招集をかけましょう。いましばらくお待ちください。」
非常招集の花火があがった。
その後兵士達が集まるのに5分はかかっただろうか?
俺は30数名の兵士の前で話しをはじめた。
「いま、城内にレディス卿がやってきている」
ざわざわと詰め所がざわめく。
「無論、幽閉されているクレスト家の人間を、エフィメラ姫を救出する為だ。
なし崩し的にドゥガル大公の下で剣を振るっていたが、
今回の一件、私はレディス卿に義ありと見た!」
ざわめいていたが、そうだそうだ!と同意の声が聞こえてくる。
「よって、我、ヴァルタァ・セリアはレディス卿の守護騎士として
ドゥガルの捕縛を宣言する!
無理強いはしない。真にレディス卿、そしてエルフィア妃に忠誠を
誓える者だけ、我に続け!」
私も参ります、ヴァルタァ殿!
俺もです、ヴァルタァ殿!
賛同の声の輪がどんどん広がっていく。
皆の声は怒号となり、打倒ドゥガルを掲げる。
「よし、部隊を分ける。A班は尖塔に幽閉されているエルフィア妃とジュリアス卿の
救出、B班はドゥガルの身柄拘束だ。A班はクリスティン、お前が指揮を執れ。
我はドゥガルのもとに向かう!」
「承知致しました、ヴァルタァ殿。よし、尖塔へ往くぞ!」
7,8名の兵士達が鍵を持って尖塔へ向かう。
残りは20名とちょっと。これだけの人数がいればドゥガルの捕縛も可能だろう。
「ドゥガルの居場所は・・・もうこれだけ時間がかかってるのか。城内にはいまい。
テンペストに向かっているところだろう」
「ヴァルタァ様、先ほど港の方へ馬車で向かうのを見た者がおるそうです。」
「既に城は後にしたということか?念のため5名でドゥガルの部屋を確認してくれ。
我と残りの者達はテンペストへ向かう!往くぞ!」
俺は10数名の兵士を連れて波止場へと急いだ。

テンペストはバウにぶら下がり重しになってしまった係留柱を外す作業が行われていた。
馬車は、その波止場にあった。
間に合うか? ドゥガルは悠々とテンペストへのタラップを登っている。
足止めをするために声を張り上げる。
「ドゥガル!王都反逆罪ならびにエルフィア妃、ジュリアス卿誘拐拉致監禁の罪で
逮捕する!」
ずらりとわたしを中心に兵士達が武器を構える。
「なんのことを言っている、ヴァルタァ?」
「この件、我らはレディス卿に義ありと見た!命までは取ろうとはしない、
おとなしく投降しろ!」
一歩、前に足を伸ばす。
「くっ!」
ドゥガルは懐から取り出したリボルバーで我を撃ってきた。
しかし、距離は30mほど、素人が撃った拳銃の弾が当たる距離ではない。
だが、一瞬の足止めにはなった。ドゥガルはもうタラップの半ばまで登っている。

させるか!
剣を鞘から左指でパチンとリリースする。
そして次の瞬間、剣を振るった。
レディス卿がやったのと同じ、ソニックブレイドだ。
だが、距離が離れすぎていたせいか、威力が足りていない。
放ったソニックブレイドはタラップをはげしく揺らすにとどまった。
わたしはそのタラップに向かって駆ける!
「覚悟!」
ドゥガルの隣にいた執事は舷門へと駆け込んだ。
それに続くドゥガル。
まずい、逃げ込まれる、そう考えた直後、ドゥガルが予想外の行動を取った。
ドゥガルは抜刀したサーベルを一挙動で投げつけると身を翻し、執事に
テンペストの舷門でタラップをパージさせた。
投げつけられたサーベルが左腕を切り裂き、熱い痛みが襲うがいまはそんなことを
気にしている時間はない!
ドゥガルとの距離が一気に開く。
わたしはタラップの最上段から跳躍し、右手で握った剣をテンペストの舷門にいる
ドゥガルに向かって袈裟懸けに振り下ろした。
ぱぁっと鮮血が飛び散る。だが、致命傷ではない。
わたしはタラップから桟橋へ転げ落ちた。
駆け寄り集まる同志の兵士達。
「ヴァルタァ殿!お怪我は!」
「ほんのかすり傷だ!それよりドゥガルだ! 構え、筒!撃ち方、始め!」
だが、銃弾が当たる前に舷門のハッチは閉じてしまった。
「くっ・・迫撃砲を持って来れないか!城塞砲を使えないか?」
ライフルでテンペストを攻撃するが、さすがに傷一つ負わせることが出来ない。
「ヴァルタァ殿、いま迫撃砲を取りに向かわせました。城塞砲はいま制圧に
向かっています」
「船を出せ!テンペストの足を止めるんだ!いますぐに出せる船は!?」
「はっ、ヒューベリオンであれば準待機でしたので即出航可能です!」
「2層甲板フリーゲート艦か。よし、往くぞ!続けっ!」


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暁の空を越えて(2007/06/11)
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