7 「命」
「フィール!無事か!?」
クローディーヌの亡骸を床に寝せ、お父様があたしに駆け寄る。
「フィール!!」
お父様の必死の呼びかけで意識がだんだんはっきりしてきた。
「えぇ、なんとか・・銀の杖が護ってくれたみたい。ファンタズムアーティファクト
だったみたいね。お父様に感謝しなきゃね。」
ファンタズムアーティファクト。それは特別な力を持った魔力を持ったもののこと。
漆黒のマントはもう影も形も残ってない。
髪の毛も少し焦げてる。
紺を下地に桃色をあしらったあたしの式服だってぼろぼろだ。
けれど、生きている。
「フィール。その銀の杖だがな、それはわたしがあげたものじゃないんだ。
無論、フィールの記憶の通り、渡したのはわたしだけどね。」
「え?・・・」
「フェゼキア・セイダス、フィールの本当のお父さんを看取った時に
フィール、君に渡してくれと頼まれて渡したものだったんだ。」
「本当の、お父さん・・・。」
銀の杖をみつめ、見入るあたし。
涙がぽろりとほほを伝う。
「護って、くれたんだ・・・。」
「あぁ。」
お父様は相づちをうつとあたしのことを抱きしめた。
「彼女、、、お父様のことがほんとに好きだったのね・・・。
そしてあたしは背負いきれないほどの業を背負ってることを忘れていた。」
お父様はあたしを抱き上げた。
「子供は親を選べない。わたしはフィールに新しい人生という選択肢をあげた。
君はその選択肢を選んだ。フィール、君はシルフィール・ファルク・シュナイザーだ。
自分自身に、生きていることに誇りを持て。フィールは他の誰でもない。
わたしの誇らしい娘だ。」
「お父様・・・ごめんなさい」
「違うだろ、こういうときはありがとうって言うんだ」
「お父様、お父様お父様・・・ありがとう、ありがとう!」
涙をこぼしながらお父様に抱きつく。
それに満足したのか、お父様はお父様はあたしをおろし、
そしてエフィメラの脇に腰掛けた。
「エフィ・・・。」
・・・一体どれぐらいの時間が経っただろう。涙もとうに枯れてしまった。
あたしの嗚咽だけが部屋に響く。
そんな中、お父様は無惨に幼い胸に突き刺さった傷口を裂いたシーツで覆うと
クローディーヌが持っていた短剣でエフィメラの拘束を一カ所、また一カ所と
解いていった。
エフィメラを抱き上げるお父様。もう枯れたと思った涙が、
またとめどなく涙が、エフィメラのほほに流れ落ちる。
こんなお父様、見ていられない・・・。ココロが痛む。
なんて無力なんだろう。
世の中がそう簡単にはうまくいかないのはわかってる。
でも、こんなの理不尽すぎるよ・・・・。
あたしのひときわ大粒の涙が銀の杖に流れ落ちた。
その時、銀の杖の宝石が突如青白く光り始めた。
・・・え?
あっけにとられるあたしとお父様。すると、エフィメラの亡骸から
あたたかみのあるオレンジ色の光球が浮かび上がり、銀の杖の宝石に吸い込まれた。
青白く、そしてオレンジ色に明滅する杖。。
そして、二人きりのこの部屋に、やさしげな声色の声がこだました。
「レディス兄様、悲しまないで。」
「「!?」」
兄様って・・・エフィメラ!?しかもおどろいたことに、その声は
銀の杖から発せられていた。
「シルフィールさんがいいものを持っていたから意識を一時的に
移すことが出来たの。」
お父様はよろけるようにあたしに近づき、肩に手をかけた。
「エフィ・・・なのか?」
「ええ、レディス兄様。こんな杖でシルフィールさんに持っていてもらわないと
ならないけれど、まぎれもない貴方の妹、エフィメラよ。」
お父様はあたしの手ごと銀の杖を抱きしめた。
ごめん、すまないと涙しながら。
「でもね、兄様、時間があまり無いの。このファンタズムアーティファクトを
使っていてもわたしはずっとここにとどまることは出来ないの。
でも錬金術をこの杖にほどこせば等価交換の原則はあるけどしばらく
顕現していられるわ。」
お父様はうなずくとむき出しになった石床に白チョークでマジックサーキット
を書き上げる。
その中心に杖を置き、詠唱をはじめた。
明滅する杖。。
すると、すっと杖が持ち上がりお父様の手に収まるとその場に風が
巻き起こり、お父様の長髪がたなびいた。
「さぁ、これでいいわ。兄様行きましょう。
わたしがこの世に生を受けた意味を、エフィメラ・トランシアが
確かに生きていたという証を残すために。」
そういうとあたしは、エフィメラさんの亡骸を自分のカーテンでくるみ、
手を胸の前で組ませ、まぶたをとじさせた。
「さあ、わたしの身体はこれでいいわ。行きましょう、兄様。」
そういって、あたしは銀の杖をもう一度手に取り、バルコニーに向かって歩き出した。
「正門は空いているな?マイヤーがわたしの船で待っているはずだ。いくぞ!」
ドアへ戻ろうとしたお父様を制する。
「大丈夫、バルコニーから降りれるわ」
あたしは銀の杖で魔法陣を描き、その魔法陣はあたしとお父様を包み込んだ。
ふわりとバルコニーから浮かび上がり、静かに4階から庭園に降り立った。
フローティング、初歩的な魔術の一つだ。
正門までは300mちょっと。
お父様にお姫様だっこされた状態でお父様は全力で走り抜ける。
幾人かの兵士がそれに気づき、静止命令をだすがそんなもの聞くわけがない。
そのうちアサルトライフルを撃ち始めたが、そうそう当たるものではない。
正門を駆け抜けるとセンチネルがアイドル状態で待機しているのが見えた。
「行くよ、フィール、エフィ」
そういうとお父様は大きくセンチネルに向かって跳躍し、ほどなく
センチネルのデッキに降り立った。
ちらりと城に目をやってから、お父様は操舵席のルーフを二度ノックすると、
マイヤーおじさんが操縦するセンチネルはメインセイルを展開した。
「マイヤー、状況が変わった。エフィメラそのものはいない。
だが、フィールの力があれば銀の剣は起動可能になった。
センチネルの火器管制はこちら(銀の剣)からリモートでおこなう。」
「承知しました。事情は後ほど聞かせて頂きます」
センチネルはどんどん加速していく。センチネルはあたしたち三人?を
デッキに乗せたまま、まだ混乱の残るセルティア城をあとにした。
ヴァスティールの街中をセンチネルが疾走する。
「フィール、吹き飛ばされないように気をつけて。
今、コンテナをあけるから」
そういうとお父様は手すりにつかまりつつ、コンテナに移り、
コンソールを開け、暗証番号を入力した。
Pi―
ロックの外れる音が聞こえ、お父様はハッチのグリップを引き上げ、
まだルーフにいるあたしに手をさし伸ばした。
疾走するセンチネルの速度はすでに200km以上になっている
のではなかろうか?
よくもこんなケッチでこんな速度が出るものだ。
あたしは左手でコンテナの手すりに添え、右手を伸ばすと、
お父様がルーフからあたしをひきあげてくれた。
あたしはハッチの中にもぐりこんだ。続けてお父様がハッチにもぐりこみむ。
ハッチの下は機動ユニット?のコクピットになっていた。
「シルフィはエフィと上のシートへ行ってくれ。
システムのセットアップ、できるね??」
あたしは指示されたシートに座りった。
「シルフィールさん、杖を腰帯に。それからコンソールを引き寄せてもらえますか?」
「は、はい。」
「ではお身体を少々お借りします。セットアップですね?シルフィールさんに協力して
もらいますから問題ありません。これからシステムへのクロッシングを行います。
現在のシステムはすべてリセットします、兄様よろしいですね?」
お父様がコンテナのハッチを閉め、コクピットにもぐりこんだ。
「あぁ、かまわない。エフィのいいように書き換えてくれ。
システムの再構築に何分かかる?」
自分の手とは思えない速度でコンソールをたたくあたしの手。
「10分と23秒ください。」
インカムを引き出し、身に着けたお父様がセンチネルを操舵する
マイヤーおじさんさんに話し掛ける。
「・・・だ、そうだ、マイヤー。とにかく郊外へ向けて走ってくれ。」
「エフィ、センサー系統を優先的に立ち上げるようにできるかい?」
「承知いたしました。システムへのクロッシングを行います。
一旦全システム落とします」
あたしは返事を待たずにシステムのシャットダウンを行った・・・
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