4「襲撃」
その夜、お父様はカッター(1本マストの小型艇)で城に向かった。
「レディス様、ご武運を。」
「ねぇお父様・・やっぱりついて行っちゃダメ?」
「ダメだ。」
操舵席から顔をのぞかせながら否定するお父様。
お父様は麗騎士の式服の上に黒いマントを目ぶかにかぶってる。
「まぁ、、仕方ないか・・・。お父様、気を付けてね。」
「マイヤー、センチネルを頼む。」
「承知しました。それでは城の正門でお会いしましょう。」
マイヤーおじさんが舫を解く。
カタンカタンとアンカーが蒔き上がる。
お父様は集光セイルを展開させる。
光が集まり、ジェネレータの音とともに浮き上がるカッター。
「フィール、マイヤーのいうことをきちんと聞くんだぞ」
「はーい」
「それじゃ正門でまた会おう!」
お父様がメインセイルを展開させるとカッターは暗闇の中を
疾走していった。
ここからが勝負時。
あたしは自分の部屋に駆け戻り、素早く着替える。
お父様と同じ黒いマントと銀の杖をいつものように
左の太もものストラップに挟み込み、店の裏口からマイヤーおじさんに
みつからないように店を出ると駅に向かって走った。
昼間の暑さももう涼しいぐらいに冷えてきている。
これも砂漠地帯ならではか。
偶然その場に居合わせたらそれは仕方ないわよね?
噴水のある大通りを走り、駅に向かってひたすら走る。
駅にヴァスティール行きの最後の船が到着するのが見えた。
急がなきゃ間に合わない!
さらに走る速度を上げる!!
切符を買い、プラットホームをタラップに向かって駆ける。
「ヴァスティール行き、本日の最終便です。
どうぞ乗り遅れのないようご注意ください」
アナウンスが流れる。
「あー!待って!乗ります乗りますー!」
「お嬢ちゃん、慌てなくて良いよ」
タラップの手すりにもたれかかかり、切符を船員さんにわたす。
「あー、よかった、、、間に合った。。」
「はは、それはよかったね。それじゃ乗船しちゃっておくれ」
「はーい」
船員さんはあたしたちが乗船したのを確認してから
タラップを引き込み、もやいをとく。
『メインローター始動、アンカー巻き上げ開始!』
キャプスタン(索巻き機)が回転をはじめ、錨鎖がゆっくりと巻き上がりはじめる。
『アンカー・アッペンダウン・サー(立錨)しました!』
『アンカー抜錨、機関微速前進!集光セイル展開!』
『機関微速前進、サー。集光セイル展開準備よろし!』
船員さんたちが出航の準備にあわただしく走り回ってる。
「お嬢さん、いまはここは危ないから船内へどうぞ」
出航の様子を見ていたわたしたちに船員さんが声をかけてくれた。
あたしは船員さんの誘導に従って船内に入る。
ドア越しに声が聞こえた。
『キャプスタンに伝達、「アップ・アンカー(錨揚げ)」』
『ヘッドスル(艦首帆)展開よろし!操帆手、各トプスル(中横帆)及び
コース(大横帆)展開せよ!』
『艦首回頭、ハード・ア・ラーボード!(取り舵いっぱい)ステディアズシーゴー(ようそろ)』
『ハード・ア・ラーボード、ステディアスシーゴー』
ふわりという浮遊感のあと船体が若干傾く。
定期便はクゥーンというリニアクラフト特有の作動音だけを響かせて
プラットホームをあとにした。
カッターは夜の砂漠の空を疾走する。
冷たい風が心地よい。
目指すのは城の東側にある港。
昼間も見えていた戦艦の輪郭がだんだんとはっきりしてくる。
軍港側からと戦艦側からのサーチライトで戦艦・テンペストは
その巨大な船体を浮かび上がらせていた。
全長400m。
旧ディティス帝国の保有していた飛行艦、つまりは飛行船に武装を
ほどこした巨大戦艦だ。
ディティス帝国が崩壊した折りに接収したと聞いている。
テンペストは城に隣接する港に係留されその威容は見る者を萎縮させる
に十分すぎるシロモノだ。
そして昼間もエル・ディから見えたように隣町からもその姿は時折みえるほどに大きい。
圧政を布いているドゥガル政権の象徴ともいえるだろう。
これもいずれはなんとかしなければならないもののひとつだが・・・
いまは爪をかんでやりすごすしかないだろう。
麗騎士であり、剣聖位の称号をもつわたしだが、さすがに戦艦を相手に
戦いは挑めない。
カッターを港に隣接するマリーナに停泊させる。
シルクロードの終着駅であるヴァスティールは大型の飛装帆船や
旧型の飛行船も発着するのでエル・ディのような駅のような構造にはなっておらず、
昔ながらの波止場の形式を取っている。
セイルをたたみ、舫をつなぎ、アンカーを打つ。
ほどなくジェネレーター出力がおち、徐々に高度がおちてくる。
桟橋と高さが同じになったところで船体をアームで挟み込み、
固定させた。
わたしはジュリアから受け取っていた少々変わった形の剣の柄を手にした。
そしてその柄の背の部分をスライドさせ、置いてあったカートリッジを
差し込み、カバーをもとに戻す。
そして親指でスイッチを押し込んだ。
カートリッジが装填される音が聞こえ、柄を3重のマジックサーキットが
包み込んだ。
上がる白煙。
次の瞬間、粒子ビームの刃が形成されていた。
レイブレード。粒子ビームを刃にした光剣だ。
錬金術による洗礼を施したカートリッジを装填することで光の刃を構築させる
ことができる、ジュリアが発明した全く新しい白兵戦用のプロトタイプの武器だ。
例の一言だけのメッセージと一緒にわたしのもとに送られてきた物だ。
再びスイッチを押し、刃をしまう。
今回はこれが奥の手になるかもしれない。
5つのカートリッジと柄をふところにしまい、剣の鞘のストラップを肩にかけ、
マントを羽織りフードをかぶり、わたしはカッターをあとにした。
決して早い時間帯ではないが、港は幸いにも今日の最終定期便がまもなく
到着するからか、街は賑わっていた。
宿や食事の客引き、観光客目当ての露天商も少なくなく、目立つ。
雑踏を抜け、城の通用門に足を運ぶ。
残念ながら、通用門は閉じており、跳ね橋はあがったままだった。
正門も同様。簡単に忍び込めるとは思っていなかったが、その落胆は大きい。
となると如何にして跳ね橋を降ろさせるかが問題となる。
「時間は限られている。最小限の行動で最大限の効果を与える必要がある」
わたしは波止場のほうに目をやった。
・・・・筋書きはこうだ。
波止場で騒動を起こし、兵士を含めた人の関心を集め、
城内外の警備兵を波止場に集め、鎮圧させる。
必然的にその騒動が大きければ大きいほど城内への関心は少なくなる。
加えて、兵士が鎮圧に時間がかかればその間は城内は手薄になる。
「よし。」
わたしは外套を翻し、大型船舶の停泊する波止場へと足を運んだ。
さわぎを起こすこと自体はわたしにとっては容易い。
この城壁に沿って並んでいる露天商のいくつかを壊せばそれで済む。
だが、それだけではほんの一瞬しか時間を稼ぐことができないし、
一般市民を巻き込むのはいささか気が引ける。
やはり停泊している船のいずれかを狙うのがベストか。
そんな事を考えながら停泊している船舶を横目に雑踏を抜ける。
目についたのはやはりテンペストだった。
間近でみるとわかってはいてもやはり大きい。
威風堂々たる巨大な四層甲板の飛行艦を見上げる。
あれをなんとかできればいいのだが・・・。
そこでレイブレードを持ってきていることを思い出した。
これでなんとかできないだろうか?
・・・レイブレードで係留柱を切ることが出来れば如何に大きな船体だろうと
飛行船ベースの艦体であるテンペストは風に翻弄され港内をさまようことになる。
斬ること自体は問題ないが、そのあと通用門までもどることができるかどうかが
問題だ。だが、そのテンペストが波止場のなかでも一番通用門に近い位置に
停泊しているというのは僥倖かもしれない。
そうこうしているうちに今日の最終定期便が到着するのが見えた。
チャンスは・・・今しかないか!?
係留柱を叩き斬り、レイブレードのカートリッジを余分に使ってしまうが
バスターモードでテンペストを係留している桟橋を撃てば舫やタラップを
吹き飛ばせるだろう。
成すべき事を決めたわたしはひとごみをかきわけ、テンペストの係留柱のそばまで
近づいた。距離にして30mといったところか。
わたしは漆黒の弾丸よろしくテンペストの係留柱に向かって駆けた。
レイブレードは光剣だ。闇夜では目立ちすぎる。
だから、ぎりぎりまでその光の刃は出さない。
迫る係留柱。気づかれた様子は無い。
25m・・・20m・・・・10m・・・まだだ!
1m!
「っ!!!!」
最大出力にしたレイブレードは緑色の光を放ち、係留柱に触れ、火花を散らす!
さすがにテンペストを係留するような係留柱は一閃、というわけにはいかない。
足を踏ん張り、わたしは光剣をそのまま振り下ろしたと同時に光の刃を収めた。
ぐらっとゆれる切断された係留柱。
わたしはのっかっているだけの不安定な係留柱を足場に蹴り、
そのあやういバランスを崩すと同時にわたしはテンペストの主錨の鎖に乗り移った。
その自重でぐらっと傾く係留柱。
ギリギリギリギリ・・・
きしむ音とともに係留柱は倒れてゆき、その重さに引きずられるように
テンペストのバウが下がり始める。
早くも異常に気がついた桟橋の警護に当たっていた兵士たちが悲鳴をあげ、慌てふためく。
わたしはレイブレードのカートリッジを廃莢させ、新しいカートリッジを
装填し、スイッチを入れた。
モードはバスターモード、フルバースト!
柄を3重のマジックサーキットが包み込んだ。
上がる白煙。
次の瞬間、まばゆいばかりの緑色の閃光が辺りを包み込み、
漆黒のマントが翻り、麗騎士の白い式服がひらめく。
「侵入者だ!」
だが、遅い!
「当たれっ!」
フルバーストに設定されたレイブレードは一発でカートリッジに内包された
粒子ビームの全てを使い、400mもの艦舷をなめるように通り抜ける。
吹き飛ぶタラップ、切り裂かれる舫い綱。
何人か巻き添えを食らって吹き飛ぶのが見えた。
一方、テンペストはバウ(艦首)に接続されたままの係留柱の重さにひきづられ、
主錨を支点に尖塔のほうへスターン(艦尾)が流れる。
と、停泊のため低回転で廻っていた艦底のロアー・メインローターが波止場に
激突し、轟音を立てて船体が大きくバランスを崩す。
そのままテンペストは停泊していた別の飛装帆船に流れたスターン(艦尾)が
激突するのがみてとれた。
鳴り響くサイレン。響く怒号。
わたしは主錨の鎖から桟橋に飛び移る。
カチリとわたしの存在に気づいた兵士が銃を向ける。
だが、兵士が銃を向けたとき、突然兵士達が火柱に包まれた。
範囲攻撃魔法!?
「お父様!早くっ!」
「フィール!?何故ここに!」
「いいから早くっ!」
兵士達が再び銃を構えなおしたとき、わたし達はすでに人混みの中に紛れ込んでいた。
賊を捕まえるよりテンペストをなんとかするほうが最優先だと判断されたのだろう。
奇跡的にもそれ以後追っ手はなかった。
「間に合って良かった。あぶなかったわね、お父様?」
「センチネルで待っているんじゃなかったのか?約束はどうした、フィール」
「えー、その前に重要な場面で助けたんだから感謝の言葉があってもいいんじゃない?」
お父様はしぶしぶといった感じで答えた。
「・・・ありがとう、確かに助かった。だが、この先はダメだ。」
「そんなぁ・・・あたしだって力になれるよ!」
通用門の跳ね橋がゆっくりと降りてくる。
桟橋が降りきり、通用門が開く。
「ダメだ。大切な娘を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
正門前で待っていろ。マイヤーがセンチネルでじきにやってくるはずだ。」
10数人の兵士達が大混乱になっているテンペストに向かって走っていく。
よし、今だ!
「いいな、フィール!」
わたしはつないだ手を離し、雑踏を駆け抜け、桟橋をわたり、城内に駆け込む。
だが、門をくぐった瞬間、わたしは城内ではなく桟橋の上にいた。
っ!結界か!
そこに声が響いた。
「お父様!あたしがいま破るから!」
最終便に乗ったあたしがヴァスティールの港に到着し、あたりを見渡すと
城の通用門は桟橋はあがったままだった。
よし、間に合った。いくら剣聖位だろうが、桟橋があがっていては
城内にははいれない。
あたしがお父様を捜しはじめたときに事件は起きた。
テンペストに異変が生じたのだ。
はじめは少し傾いただけだった。
だが、だんだん傾きがひどくなっていく。
こんなことが普通に考えて起こるわけがない。
お父様の仕業に違いない。
あたしは逃げまどう雑踏をかきわけ、テンペストに向かう。
テンペストの桟橋の側までやってきたとき、主錨の鎖の上から船体をなめるように
緑色の光がほとばしった。
お父様だ!警備をしていたであろう数少ない兵士がお父様に気づき
銃を構える!
お父様は気づいた様子はない。
わたしは咄嗟に左の太もものストラップに挟み込んだ銀の杖を抜き取り、
その場で術を編み、火柱を目の前に登らせ、銃を構えた兵士を
ひるませた。
その直後、テンペストのロアーローターが桟橋を叩き、船体が港内を
さまよい始めた。
漆黒のマントのフードをあげ、突然の範囲攻撃魔法におどろくお父様に声をかける。
「お父様!早くっ!」
「フィール!?何故ここに!」
「いいから早くっ!」
お父様の手をひき、逃げまどう雑踏に紛れ込む。
追っ手は奇跡的になかった。そんなに大勢の兵士が監視していたわけではないし、
きっとテンペストをなんとかするほうが最優先だと判断されたんだと思う。
もう大丈夫と判断してお父様に話しかける。
「間に合って良かった。あぶなかったわね、お父様?」
だが、帰ってきた言葉は冷たかった。
「センチネルで待っているんじゃなかったのか?約束はどうした、フィール」
あくまであたしの同行を拒絶する気のようだ。
「えー、その前に重要な場面で助けたんだから感謝の言葉があってもいいんじゃない?」
お父様はしぶしぶといった感じで答えた。
「・・・ありがとう、確かに助かった。だが、この先はダメだ。」
あたしのことを大切に思ってくれるのはほんとに嬉しい。
でもそんなだからこそあたしはお父様の力になりたいのだ。
「そんなぁ・・・あたしだって力になれるよ!」
通用門の跳ね橋がゆっくりと降りてくる。
跳ね橋が降りきり、通用門が開く。
「ダメだ。大切な娘を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
正門前で待っていろ。マイヤーがセンチネルでじきにやってくるはずだ。」
10数人の兵士達が大混乱になっているテンペストに向かって走っていく。
「いいな、フィール!」
ぽん、と肩をたたくとお父様はあたしとつないだ手を振り払い、
雑踏を駆け抜け、桟橋をわたり、城内に駆け込んだ。
だが、門をくぐった瞬間、お父様は城内ではなく跳ね橋の上にいた。
結界か!
これなら役に立てる!
「お父様!あたしがいま破るから!」
あたしはお父様のわきに駆け寄り、呪文を詠唱する。
魔法陣が地面に浮かび上がり、光があたしの右手に持った銀の杖に収束する。
「さ、お父様!手をつないでついてきて。」
光り輝く妃天を前に突き出し、お父様の手を強引につないで
そのまま前に進んでいく。
すると目の前には城壁内の城の全容が広がっていた。
「ね?あたしがいなかったら先に進めなかったでしょ?
ついていっていいわよね?、ね?」
お父様はため息をついた。
「はぁ・・・わかった、わかった。そのかわりしっかりついてくるんだぞ?」
「やたっ♪」
ついに同行の許可が下りた♪
ねばってみるもんだなぁ、と思う。
正直、ヴェスタル見習いでしかないあたしがどこまで力になれるかわからないけど、
魔術を用いたトラップなら回避することは出来る。
当面はそれだけでもいいだろう。お父様と一緒にいられるのなら。
凛と鈴の音が鳴る。
クローディーヌに用意させた警戒の鈴だ。
侵入者。
おそらくは麗騎士だろう。
だが、麗騎士が一人で結界を通り抜けたとは考えにくい。
同伴している者がいるのかもしれない。
ヴェスタルか?
いずれにせよ、これ以上は城に長居は無用だろう。
司令本部は常に安全な位置に置くべきなのだ。
机の上の硝子の呼び鈴を鳴らし、執事を呼ぶ。
ほどなくドアをノックする音が赤い毛足の長い絨毯を敷き詰めた
広い部屋に響いた。
「ドゥガル様、御用でしょうか?お飲み物を用意致しましょうか?」
「いや、鞄を持て。連邦評議会に提出する書類を全てまとめろ。
エフィメラ姫に関連する報告書もだ。城を出るぞ。」
「今の時間からでございますか?一体どちらへ・・・?」
「居城をテンペストに移す。すぐにだ」
「承知致しました。ただ今準備を致します。ですが、書類をまとめるとなると
30分はかかるかと。」
「20分ですませろ。」
「はっ。かしこまりました。ではお召し物を用意致します。書類はそのあとで
よろしいでしょうか?」
「かまわん。それから城をあけることは必要最小限の人間にだけ伝えよ。
衛兵にも知らせる必要はない。それからテンペストに移動する為の馬車を用意しろ」
「は?・・・知らせなくてよろしいのですか?」
「聞こえなかったか?知らせなくて良い。
ヴァルタァとクローディーヌだけに知らせれば十分だ。
いやクローディーヌは知らせなくともわかるだろう。
ヴァルタァと近衛兵だけに知らせろ。」
「失礼致しました。」
ふかぶかと頭をさげる執事。
召使いは一端部屋を出ると人を呼び、伝言をした。
再び部屋に戻りクローゼットから服を選び、天蓋付きのベッドの上に並べる。
ドゥガルに服を着せようとするが、ドゥガルはそれを断った。
「服はよい。書類をまとめよ。」
「はっ。それではお机の方を失礼致します。」
・・・ヴァルタァはともかくとしてクローディーヌは決して麗騎士などに遅れはとらない。
だが、油断は禁物だ。常に一手も二手も先を見据える必要がある。
如何に麗騎士、剣聖位の称号を持つ騎士とて、所詮はただの騎士。
動き出したテンペストを止めることは出来ない。
そろそろその歯車を動かし始める必要が出てきたようだ。
着替え終わったドゥガルは窓まで歩み寄り、戦艦テンペストを見上げた。
そして見上げたまま、机で書類をまとめている執事に一言告げた。
「急げ」
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