……もはや余興は終わった。
いま演じた役者達はさきほども言ったように、みんな妖精であって、
大気の中に、淡い大気の中に、溶けていった。
だが、大地に礎を持たぬ今の幻の世界と同様に、雲に接する摩天楼も、豪奢を誇る宮殿も、
荘厳きわまりない大寺院も、巨大な大地そのものも、
そう、この地上にあるいっさいの物は、
結局は溶け去って、今消え失せた幻影と同様に、
あとには一片の浮き雲も残しはしない。
われわれ人間は……夢と同じもので織りなされている………
〜シェークスピア『テンペスト』第四幕第一場より〜
プロローグ
機動ユニット。それは人が生み出した戦争のための戦闘機械。
全高10数メートルのその機械仕掛けの人形はパイロットが乗り込み、
いかなる戦局にも対応できるよう設計されたものだ。
だが、DFC0009、機動ユニットの戦闘時の情報量が人間の理解力を越えた。
戦闘という混乱の中、百数十を越す火気・制御管制をコンピュータを
もってしても制御しきれなくなったのだ。
いくらコンピュータを使っても最終的に判断を下すのはあくまで人なのだ。
そしてあまりに高度化した機動ユニットは兵器としての意義を失った。
また一時は医療や救難活動、土木作業の分野まで進出しかけていた
機動ユニットだったが、これも低迷。
これにより科学技術の発展は停滞した。
その科学技術の停滞は次第に社会的恐慌と衰退をもたらし社会、
そして人々の心に広がっていった。
また機動ユニットの持つ有用性に限界が見えた紛争は泥沼化の様相を呈し、
人の力に依存せざるを得なかった一世代前の悲惨な戦争に逆戻りした。
その一方、神のいたずらか、それともひとという種が生き延びようとする
あがきだったのか・・・。
各地では「サイバネティクスチャイルド」と呼ばれる
コンピュータとシンクロすることが出来る新たな人種が誕生しつつあった。
けれど、人々はその新人類を受け入れようとはしなかった。
自分達より優れた能力を持つ彼等に畏怖を覚え、迫害を加えたのである。
大陸での迫害は中世の魔女狩りの様相を呈し、彼等はひっそりと自ら神より
授かったその力を封じ込め、身を隠すほかなかった。
愚かなる人々。
悲しきかな生きあがく人々の業。
神よ、どうか彼等に暗き闇夜を照らす灯火を与えたまえ。
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